与える者:ギバー(Giver)
奪う者:テイカー(Taker)
与えられれば与え、奪われれば奪う者:マッチャー(Mutcher) ※実際にはこれが大半を占める
社会的に成功しているひとはギバー。
しかし底辺にいる人たちもまたギバー。
Free To Play のソシャゲがあっというまに隆盛を誇った最大の理由はその手軽さ以上にまずはタダで楽しめるという敷居の低さがあったからであり、人間関係の構築にもまずは相手に自分が愛想よくする、贈り物をするのが上等手段とされている。まずは与える。ギバーになる。与える者が、成功を掴む。言っちゃ悪いが経験則上「んなこたあ分かってる」って話なわけで。
そんなわけでこの本がベストセラーなのは知っていたけれど、分かりきっていることを視点を変えようが難しい言葉を駆使しようがフランクでフレンドリーなムードで語られようが、長々読むのは時間の無駄と思い、読まなかった。
読むことにしたきっかけは「与える人が奪われる人にならないための方法」が書いてあるという情報を得たからだ。そう、知りたいのはそれ。与える人になれるかどうかは自分の努力次第として、与えるものが増えると、あるいは価値あるものを与える存在になるほど、周囲に”奪うやつら”(テイカー)が群がってくる。そういうやつらに奪われるのはもうこりごり。どうすればいいのか知りたかった。
で、結論。テイカー対策としては
・まずは与えよ、相手が返さなければ与えるのをやめよ、しかし時には与えて様子を見よ(ギバーであってもテイカーに対してはマッチャー的に振る舞う)
あるいは
・マッチャーの存在をうまく使え。テイカーであることがばれることのペナルティが大きい場合テイカーはテイカーとして振る舞わない
ってこと。
うーーーーーーーーん。まあ、そりゃそうですよねって感じ。要は相手の振る舞いをよく見て自分のほうが損しているなと思ったら与えるのをやめなさい、とか、相手がずるをしないよう人目のあるところで与えなさいっていう話なわけで。結論としてはそこらによくあるビジネス書の「うまく立ち回るやり方」と推奨している行動内容自体はさほど変わらないよなあという感想。テイカーも結局いかにマッチャーの目を盗んで奪うかってことに執心していたりするので、そのあたりすんごいたぬきときつねの馬鹿し合い的なやりとりが必要になるわけでしょ。いやあ、面倒くさいねえ、と。
でもまあ、ベストセラーになったビジネス書がこれだけ長いページをかけて結論がそれってことは、結局そういうことは必要になるんでしょうね。
ちなみに本書は多数のページを割いて、組織の底辺にいるのもギバーだが、いっぽうで上辺にいるのもギバーという話をしている。そして、同じギバーでありながら上なのか下なのかの違いを分ける最大の原因を「テイカーに搾取されるままにしているか否か」に求めていて、底辺のギバーに「テイカーに搾取されないよう気をつけよう」と訴えているわけなんだけれども…
内容の結論として結局、今の時代においても「与える」だけの人では成功しないわけで。「与える」ことは大事だけど、それ以上に社会的にうまくふるまうことが大事って感じがして。
まあ、なんとなく、改めてタイトル見てもやもやしましたけど、読んでよかったなとは思います。「ギバー」「テイカー」「マッチャー」という分類の仕方が自分のなかにできたのがよかったです。「あ、こいつテイカーっぽいな」って思えるようになったのが素晴らしい。言語化って大事だよね。