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漫画

七つ屋志のぶの宝石匣(1)

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代々続く名門家の嫡男でありながら、幼い頃に質草にされたまま質流れしてしまった青年、北上顕定と、その婚約者であり宝石を霊的に感じるとる力を持った不思議な女子高生、志のぶ。顕定は、生家の唯一の思い出である「赤い宝石」を探し求めていて――

そりゃもう面白いに決まってます

あらすじ書いててめっちゃワクワクしました。この作者さんははじめ平成よっぱらい研究所で知って、その後のだめカンタービレがブームになるまでそれ以外を読んだことがなかったのですが、いやもう、漫画がうまいですよね。特につかみが抜群にうまい。イケメン! 婚約者! 上流階級! 宝石! 秘密! スピリチュアル! 女子の好きなもの全部盛りですよ。いつも通り。そして、「天才と目され人望もあるがその実苦労人で神経質な男」と「社会的にはダメダメだが男の得意分野で他をよせつけぬ天分を持ち合わせた天然ボケ少女」の組み合わせ。これもまたいつも通り。のだめしかり、天才ファミリーカンパニーしかり。

なお、よっぱらい研究所で作者さんにふりまわされていたぽんちゃんとご結婚され、その後の育児漫画とかみてても、

この「万能型の苦労人男」と「一点突破型の天然ボケ女」の組み合わせって自己投影乙と言わざるをえないんですが、いやいい。それでいい。むしろそれがいい。だって読んでて楽しいもん。

主人公が天才でまわり(主人公の意中の相手を含む)がそれに振り回されるって少年青年漫画問わず男性向け漫画にはよくある気がするんですが、女性向けだと意外とないんですよね。いや、ヒロインの無垢さとか天然さとか一途さとか一生懸命さに男側が感銘を受け「そんなお前を俺は――」的な展開はよくありますが、そういう性格面で(余人には他との差がよくわからんけども)素敵ってだけでなく、能力面でも男側がヒロインに畏怖の念を抱いている的な、そういうのって本当に少ない。

とはいえおとなしくなったなあと

別に悪い意味ではないんですが。いやのだめカンタービレがブームになった時に、よっぱらい研究所について「あの人気シリーズの原作者にこんな過去が!」的なアオリがついた週刊誌の車内広告を見たんですよ。清純派アイドルが実はAV出演経験ありましたくらいの勢いでしたけど、思ったのは、そもそものだめも汚部屋の住人じゃねえかっていうさ…今更作者がやらかしてた過去があったからなんだというのかっていうね。それが、今回はなんとなく、こう、みんなそれなりに常識的というか。志のぶちゃんの浮世離れっぷりもそこそこの範囲にとどまっていてね。作者さんの変化なのか、現代に合わせたものなのか

ちなみによっぱらい研究所は、もし今新たに同じ内容を出版しようとしたら、めっちゃ叩かれると思う。いやそもそも出版社側もそこまで冒険はできないから出版自体をしないかね。だって未成年飲酒めっちゃ堂々と言ってますし。よっぱらい研究所自体はまだ世に出ていますが、もうだいぶ過去の話だから当時のことに今更目くじら立ててもってことで誰も言い出さないのかなとは思います。

話は戻って宝石匣

なんか話がずれましたが、とにかく面白かったです。ちょいちょい出てくる宝石のトリビアもいい。監修でもついているのかなと思いましたが、あとがきで、作者さん自身が宝石鑑定の学校に入学したとか描いてありました。しかも、別にそもそも漫画の取材としてではなく、興味があったから的なノリで。なんだかんだ、この作者さんてけっこう真面目で勉強熱心だなあと思います。

で、続きも買おうと思うんですが、買う前に自分に言い聞かせたいことがひとつ。

たしかに面白い。興味深い謎も散りばめられている。でも

謎解きのカタルシスに期待するのはやめろ。

絶対、肩透かし食らうから。

ってね。

自分にね。

この作者さん、つかみはうまいんですよつかみは。

で、途中の展開もいいし、オチだってめでたしめでたしでいいんですよ。

嫌いじゃないんですよ。

でも、つかみのワクワク感と壮大感に対して、それに対する解決策の提示がいつもなんかがっかりするんですよね…のだめの千秋がかかえていた飛行機に乗れない問題も、なんかすかーと(スカッと、ではないのがポイント)クリアして「え?! それでいいんだ?!!!」ってちょっとガクってなったおぼえがあります。ていうかそのエピソードちゃんと覚えてすらいない…全巻読んだはずなのに!

今回も、代々続く名家の突然の一家離散とか、キーになる宝石とか、もうワクワクする要素は散らばってるんですが…えーと、いや、私の期待値がちょっとずれている部分もあるとは思うんですけども、私的にはここまでお膳立てがそろっていたら、たとえば小池一夫のように、宝石だけを探していたはずか日本の中枢の闇をうっかりのぞいて追われる身になったりとか

行方をくらました章子さまが実はレジスタンスになって各国を逃亡していたりとか

はたまた、実はその「赤い宝石」と北上家は超古代の流れを組む一族で顕定と志のぶもまた人知れぬ戦いに身を投じることになったりとか

※どっちにするか悩んので両方出す^^

あるいはその「赤い宝石」というのが一般市民には秘匿されている超科学でそれを狙う「青い宝石」「白い宝石」一族との戦いがはじまるとか

はたまた、宝石の声が聞こえすぎてなんかいつの間にか地球の息吹がどーみたいな話がメインになりかかってしまったりとか

ここまでお膳立てがうますぎるとついうっかりそんな期待をしてしまっている自分に気づくわけですけれども、まあ、多分、というか確実に、そういう方向の話にはいかないと思うので。

それを心して次巻以降も読みたいと思います。きりり。

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