結婚をひかえ幸福の絶頂にいたロシアの大学生、マルコが、「宇宙の星を作る」担当者として強制招聘され、地球の、恋人のもとに帰りたいとじたばたしながらも星を作る仕事に粛々と従事していく話。
ちなみに任務が終わるまで地球には絶対に帰れないというのが途中で明らかになる。休暇ぐらいとらせてやれよ、と思うのだが、星作りの担当者の間はふしぎパワーで不死になるため、その状態で戻すのは確かに難しいのかもしれない。
なお、不死と言っても、死ぬは死ぬ。しかしすぐに生き返る。死ぬほどの怪我を負った場合、治療するよりも一回死んでから生き返ったほうが全快までが早いという、生命軽視この上ない仕様になっている。そして、死ぬと死亡手当てが出る。痛いのを我慢すれば死ねば死ぬほど収入が増える、というのはどうなんだろうか。正直、担当者は任期終了後まともな日常生活に戻れるのか心配になる。(私なら無理だ) なお不死である理由は、多分途中で死んだ場合に人材を補填するのが面倒くさいからじゃないかと思う。4巻で、どうやらこの仕組みを整えたと思しき「神様」が出てくるのだが、なんというかそんな性格してそうだ。
なお、ちょっと申し訳ない感想になってしまうが、全体的に、ONE PIECEの二次創作っぽい雰囲気、という感じだ。ネガティブな感じの言い回しになってしまったが、批判的な意味のつもりではない。別にパクリキャラなども出てこない。絵柄の雰囲気がなんとなくそれっぽいのと、それぞれに閉鎖されている色々な世界の人種のバラエティや外部からは奇妙に見える風習といったものを楽しんでいく、というのが、初期のワンピを思い起こさせた。こういう架空の紀行ものっぽいのは好きだ。ちなみにワンピはワンピで、以前1巻からまとめ読みしたときに「この架空紀行ものっぽい感じ、なんかスリーナインみたいだな…」と思ったので、一周まわって宇宙に帰ってきたとも言える。
全体の雰囲気としてはほのぼのしているのだが、ちょいちょいと、突然のリョナ展開が出てくる。(そのあたりが二次創作っぽいと感じた理由か) 「人間の形をしたもの」を食べないと生きていけないという設定を付与された星の住人の行く末や、住民の大半が体をドールハウス化している星に関する話は、まさに大いなるものに存在ごと弄ばれているというか、星とそこに住まう人々の運命そのものが暇つぶしのおもちゃに過ぎない、という感じでなかなか鬱い。
全体としてもちろん面白いのだが、そんなわけで、ある程度メンタルが健康的な時に読んだほうがいいのではないかな、という印象。