ウィザードリーっぽい本格ファンタジーダンジョンで、モンスターを食う話。1巻発売時からずっと読んできたんですが、6巻発売を期にまとめてレビュー。
この作者さんたしか初単行本がちょっと話題になったと思うんですが、これはジブリ絵柄系の雰囲気楽しみ系漫画だな、と読まなかったんですよね。(ごめん)
(なおまだ読んでない)
そして次にでたのがこの本。当時すでに食漫画は流行りに流行っていたので、思い切ったタイトルと切り口にこうきたか!と膝を叩きましたよ。
こういう架空のもののレシピとか味とかって、検証不可能であるがゆえに簡単なようで、面白く描くのは難しいよねーと、植物系動物系モンスターはもちろん、果ては無機物系モンスターまで(さまよう鎧の設定はすごかった)、次々出て来るモンスターレシピを楽しんでいたんですが。
あれ。
読んでいくうちに気づくんですよね、これ。
ガチでちゃんとしたファンタジーやんて。
とっつきは色物めいてますが、日本人が書いた指輪物語的な世界観の、なんというか中世西洋風ファンタジーとしては白眉。主人公たちがいるのはずっと小さな島のダンジョンのなかですが、世界の広がりがちゃんと見える。さらに、そのダンジョンの設定というのが、なんというか非常にちゃんとしている(語彙力なくてすまん…)。その設定や、魔術師や、仲間たちの設定が出てきたのがかなり後のほうからになってなんですが、ここまで作り込んだ設定や世界観を全然説明せずに、はじめのうちはゲテモノ食とそれにドン引きしながらもしぶしぶ食べる仲間たちってもんを描き続けた作者さんは、じつはものすごくすごいひとなのではないだろうか。たった6巻なのに、随分深い話を読んだなあ!と感慨深いけれど、これらの設定が冒頭からずらずら説明されてたら多分、よくある話だな…と深いところまでは理解せず途中で脱落してたと思います。当初は単なる気の弱い変人冒険者だと思っていたライオスが、実はけっこう名の知れた冒険者だったと知った時もなかなかカタルシスがありました。
それに、その主人公(多分)であるライオスが唱える無茶して頑張るよりもちゃんと食べて寝たほうがいいというのは、往年の体育会系的根性論が否定されている最近の流行りの傾向かなと思いますが(いいことだ)、それを、というわけでモンスター食おうになっているところが、どんなにシリアスな展開になっても、どんな真面目な顔で言い争っても、笑いどころが残っていて楽しいなと思います。
一見奇異なだけのとっつきが、実はちゃんと物語の根幹を成しているんですよね。
近い世界観で思い出すのはロードス島戦記なんですが、
これよりも良い意味でクールというか主人公やその周囲が淡々として一歩引いたダメ人間なのが、現代風だなあと思います。ひと昔前なら、主人公はきっとシュロー。(6巻の表紙のサムライ)(真面目な性格のいいとこボン)
というわけで、今いちばん内容が安定している、安心して続きを楽しみにできるシリーズです。ただ、内容や設定がちゃんとしているだけにかなりシリアスな設定を背負ってしまったファリンがどうなるのか心配です。はじめに出てきたファリンは、名前もよくわからないままに火竜に食われたので、ああいい子だけどまあって感じでしたが、ちょっと戻ってきたときのエピソードとか、回想のなかのエピソードとか、すごくいい子だと知ってしまった今では、悲しい最後にならないといいなと思います。
狂乱の魔術師とやらの説得もごはんでなんとかなったりしてくれないでしょうかね。美味しんぼ的な感じに。