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漫画

大奥 15

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よしながふみさんは短編の名手だと思っていたひと、手をあげてください。はい。私です。間違ってましたすみません。長編も最高です。

大奥も1つ1つのエピソード、時代はそれほど長くないので、ある意味では短編だ。ひとによっては単行本1冊使い切るようなのは中編と呼ぶのかもしれない。ともあれ短編中編の名手のよしながさんらしい構成なんだろう。この作品について、そう思っていた時代が私にもありました。ここへきて、作中ではすでに亡くなった方達について語られると胸が熱くなる。後世の時代の彼らからみたら偉大で迷いなくその人生を完遂したかに見える先人たちもまた、それぞれの時代でもがきながら悩みながら生きていたことを知っているからだ。エピソードを積み重ねてきたからこそのこの重みだなあと思う。江戸時代というのは家康が作り家光が確立し犬公方の家綱の時代に栄華を誇り、吉宗が盛り返して慶喜に終わる、というくらいは知っていたけれどちゃんと読んだのも(これをちゃんとというカテゴリに入れて良いのかどうかはまあ置いといて)これが初めてで、それぞれの有名どころの将軍の周辺の人々、時代背景、あるいは非有名どころのエピソードもここまですごく興味深く読み続けられている。このシリーズがはじまった当時はたしかドラマの大奥が流行っていた時期で、ああ、流行りにのったんだなあと思っていたけれど、ドラマの大奥が忘れ去られてもこの連載は続いている。知名度の低い将軍もエピソードを飛ばすことなく、丁寧に描いている。その胆力がすごいと思う。

赤面疱瘡の問題もとうに過去のものとなり、女性中心に動いていた江戸時代が、いかに男性中心の現在我々が知っている時間軸へと戻っていくのか。正直、赤面疱瘡が治った時点で、もうそろそろこの連載終わるんだなあと思っていた。あとは誰もが知る最後の将軍慶喜に代替わりしてそれで終了、と。しかしまだ終わらない。今巻の最後で明かされた家茂の正室和宮の秘密にはかなり驚かされた。もう作者さんの大抵のパターンはわかったような気になっていたけれど、え、これ、いったいどうするの?! この人どうなるの?! というのが久しぶりに気になった。和宮がこの先どうなっていくのか。天璋院のように、あるいはこれまでに存在したあまたの将軍のお相手のように、元は敵でもやがて徳川の人間となっていくのか、あるいはそうではないのか。最終話でコケるのが名作の条件、とは悲しいながらもどこか納得できるところのある意見だけれど、徳川15代のその大半を書き終えて、物語の終焉に向け加速していくかと思いきや、あえてここからはじまらんばかりの衝撃展開を持ってきたことには頭がさがる。

実は、赤面疱瘡のあたりの治済が胸糞で一度いやになり発売を追っかけるのをやめてしまったのだけれど(ちなみに治済が権力を握ったあとの包み隠さぬおサイコっぷりは胸糞を通り越し怖さが突き抜けすぎてもういっそ面白かった)、最後まで見届けたい。

ちなみにただひとつ残念なのは、登場人物の顔がめっちゃ被ってるなあということ。誰々に生き写し、とか作中で言及されている場合もあるけれど、家定と家茂の顔とか、多少表情は違えどなんかどこかで見たなあ感がある。そのあたり今思えば吉宗の子孫たちはバラエティに飛んでいてわかりやすかった。吉宗は史実としてブス専だったとかいう話を聞いたことがあるんですけども、いやなんか急にいまみんな違ってみんなブス、という言葉が頭をよぎったのですが他意はないです、ごめんなさい。

とにかく続きが楽しみです。早く最後まで読みたいような、なるべくゆっくりと読みたいような。どちらにしても「最終巻まで出たらまた改めて1巻から読み直してみよう」と、読み捨ての多い私にしては珍しくそう思わせてくれる、良漫画。

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