出ました! 待ってました! 今巻の事件は、雪夜叉伝説殺人事件、タロット山荘殺人事件、悲恋湖殺人事件の3つ。各事件の最後にある犯人たちへのインタビューが最高にいい! あのバイタリティを持って社会復帰したらもう世界も変えられる気がするんですけど、生存している犯人も大抵の場合無関係のひと殺しすぎなので、普通に考えてまずもって死刑確定なのが残念。
雪夜叉伝説殺人事件
ダメよ真理奈…!
寝たら死んじゃう!
デッドオア氷橋(すがばし)よ…!
犯人のなかで一番好感度が高かったのがコレ。名言出まくりでした。
本編読んでるときはなんとも思わなかったですけど、氷橋ってたしかにそうそう簡単に作れるもんじゃないですよね。ていうか吹雪のなかであんなもん作れる体力があるなら、もっと人間離れした体力を生かしたトリックがいくらでも実現できそう。あんなに努力した氷橋をうっかり見つけトリックを台無しにしようとした明石は、そりゃあもう殺されてもしかたないってもんです。
そしてトリックが完成したものの、期待の明智がなんと見当違いのアイドルの玲香ちゃんに疑いをかける。すると
明智…おま…
明智!!
期待が大きかっただけに、この展開にはもはや言葉もないのがよくわかるけど、心の中では呼び捨てなのがなんともw
実際問題、事前に録画したものを流していたんだ! とかいうなら、その録画の証拠くらいは見つけてからその推理披露しろよって話ですよね。しかし明智の暴走はとどまるところを知らない。殺人シーンを事前録画したという推理という名の妄想の証拠はなにひとつ提示できないくせに、プライベートな入浴を盗撮した録画テープを堂々と証拠として出してくる明智を前に
誰か明智を止めて……
と絶望の表情を見せる真理奈。そこに助け舟を出した救世主こそ、我らが金田一少年!!!
そして殺人計画は最後まで成功裏におさめ…
演技の経験もないのにここまでやれるなんて…!
とんだタイムキーパーがいたものだわ…!
どう考えてもスポットライトを浴びる側の人間…!
と、あいも変わらず凄まじい自画自賛に酔いしれる犯人・真理奈の背後で、厳しい表情を見せている真の名探偵もまた、我らが金田一少年…!!!
そしてトリックが暴かれ、最後のインタビュー。しかしここでも
私のトリック完璧だったもん!
と、最後まで圧倒的自信を見せつける真理奈。
でも実際問題、明智をあそこまで躍らせた真理奈って、明智より頭いいし度胸あるよね…私からも言いたい、とんだタイムキーパーがいたものだわ…!
タロット山荘殺人事件
いっぽう、賢いようでバカなところがかわいいっちゃ可愛い小城が犯人のタロット山荘殺人事件。
タロットというと中二病心をいやおうなく刺激されるわけですが、それを
すごく意味深な感じになる…
という、身もフタもない理由もあからさまにトリックに利用した小城は確かに東大出身なだけはある。うん、実用性大事だよね!
金田一の生還には、本編を読んだときも、これで本当に生還できるとかこいつダルダルキャラのふりして本当はマスターキートンより鍛えてるだろ
と思った記憶があるので、小城の
クマムシ並みの生命力ですよ
というコメントが的確すぎて笑えました
悲恋湖殺人事件
このシリーズの面白さの根幹て、スピンオフ作者さんの言葉選びのセンスにあると思うんですよ。それを特に感じたのがこの事件。怪しいやつを全員殺害という、現実にいたらどう考えても殺人狂な発想で行動する犯人・遠野が、恋人の仇と判明(ここも多少怪しいw)しているS・Kというイニシャルになぞらえて名言連発。
S・Kは…S・K(すべて・ころす)…!
S・K(すべて・くちく)…! それが俺のS・K(さつじん・けいかく)…!
S・K(そういう・こと)!
S・K(すごく・かんしゃ)!
S・K(スマン・きんだいち)…!
と、キメ台詞から小さいコマのセリフまで、S・Kづくし。
深すぎる憎しみはもはや愛に似ているというのはBL界隈でよく言われる話ですが(メイビー)、お前もうS・Kのこと実は好きだろって感じです。
そして途中、原作者の天城征丸に激似のトリックの神まで出てきて、トリックの神に愛されていると勘違いするも、最後(恒例の犯行後インタビューw)には
僕のこと抱くだけ抱いて…
本当の愛は金田一に向いていたんですよ
と悲しいセリフを残し湖の底に消えていく遠野。
悲恋湖という名前は、遠野と昔の恋人の悲恋にひっかけて名付けられたのかと思っていたんですけど、本当はトリックの神と金田一と遠野の悲しい三角関係を暗示していたのかもしれませんね(笑)
以上、今回もめちゃ面白かったです。これを読んだあとで、また本編が読みたくなる!
次巻では金田一少年が犯人になるあの事件の裏側が読めるそうで、すごく楽しみです。
なお、本人たちのセルフスピンオフなのか正統派続編なのかの金田一37歳の事件簿も気になっているんですけど、評判どうなんでしょう。