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エッセイ 漫画

大家さんと僕

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芸能界にはまったく詳しくないので、作者さんのことは知らなかった。けれど、すごくよかった。大家さんとテレビに出たこともあるそうなので動画を探してみようかとも思ったけれど、この最低限の線で描かれた静謐な世界をそっとしておきたくて、探すのはやめた。話のなかには芸人さんのお仕事の話題も色々でてくるけれど、回ってくる仕事を精一杯にこなす作者さんの姿は明日のしれない日雇い仕事を淡々とこなす日雇い職人のようだ。どこともしれない”高み”を目指しギラギラしていた火花とはまた違う。火花でいう「芸人」は現代においてその地位を認められた「アーティスト」で、矢部さんのような芸人こそが本来の意味での「芸人」なのかもしれない。淡々として、乾いていて、だけどどちらも同じように不安定だ。

構図にすごく凝っているとかわけではない。ほとんどがバストアップか引きの絵で、大家さんとの日常が綴られていく。けれどいつの間にか現実と非現実の境が曖昧になり、机を挟んで古い公衆電話からかけられた電話から今はもういないホタルの話をスマートフォン越しに聞き、もしかしたら戦時中に滑走路として使われるはずだったかもしれない道路からタクシーは離陸し空を飛ぶ。そんな作者さんの心象風景に、気がつけば引き込まれている。

一番好きなエピソードは大家さんの初恋の人の話。一度だけ一緒に踊ったけれど、それきり相手は結婚してしまって、最近になって再会。もしかしたらあの時両思いだったかもしれない、と知った大家さんの言葉。

今と違って女性からなんてそんな時代じゃなかったから

 

マジメすぎたのかしら

 

もっとスレたかったわ…

なんだかすごく、可愛いなあと思った。

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