数ある「オタクあるあるもの」のなかで一番好きかもしれない。いや、社長が博識すぎてあるあるものを超えているかもしれない。オタクスパダリものとでも言えばいいのだろうか。しかし博識で社会的地位も高い社長と、その社長の嗜好を先回りし年単位で好みの同人誌まで確保している作者さんのどちらがスパダリ(オタク的な意味で)なのかは、議論の分かれるところである。かつてオタクといえばアニメや漫画が好きな社会不適合者だと見なされていて、みな学校や職場では必死にその正体を隠したものだが、オタクというのがむしろステイタス化した昨今、オタクであることを積極的にアピールする人すら増えている。「コミケに行ったことがある」「コミケに出ている」と皆に聞こえる場所で語る彼らの顔は誇らしげである。いい風潮だとは思う。いい時代になったものだとも思う。だけど少し、だけど少しだけ、萌えだの沼だのを大声で会話されることに違和感を感じているBBAとしては、社長さんと秘書さんの密かな、しかし深すぎる腐交流が心地よかった。少し後ろ暗いくらいがいいって思うの、問題でしょうか。
なお、オタクあるあるもので次に好きなのは、御手洗直子さんだ。社会的にもちゃんとしている腐男子社長と真逆だけど、この人はこの人ですごい。ていうかこの人少しおかしいよなと思う。そこが大好きだ。なりたくはないけど。本のタイトル的には”腐女子になると”人生底辺だといわんばかりだが、こういう人はどういう道選んでも自分の道を突き進みすぎてほかを全部振り落とすタイプだと思う。昔のコミケはこういう人たちが群雄割拠していた印象がある。時間も人生も才能も同人誌にステ全振りみたいな。