恋はいつか終わるものだし、青春という熱病から醒めるのは多分もっとずっと早い。
物語は、ある老女を、かつての同級生だった老女が訪ねてくるところから始まる。二人はかつて恋仲であったことを伺わせる。しかし、互いの手をとりあうにはすでに歳月は遠く過ぎてしまっていた。枯れていくばかりの老女と、今でも闊達で自由な、眩しく映る彼女。わずかばかり思い出に浸り、それが遠い日の夢にすぎないことを確認して、別れ、そして彼女は不慮の事故で帰らぬ人となる。それが一話。
話が進むごとに時代は遡る。ひとりは平凡な人生を失い、ひとりは平凡な人生のみを強いられることとなった。それぞれに不満で、それぞれに充実した日々。若い頃、女学校という鳥籠の中で罹患した女同士の恋という熱病が残したものは、甘い思い出よりもあまりに重い後遺症。それはその後の二人の人生に、小さな影を落とし続ける。
思い続けていればいつかは結ばれるとか、苦しくともつらくとも恋は尊い、とか、そんな夢物語に現実というものの重みを突きつける。醜聞で婚約破棄となるなど、古い時代・古い価値観を描いていることも含め、文学作品のような趣。
子供の戯れのようなその恋は、その後の彼女らの人生を彩るものではなくむしろ重荷になっているようにすら見える。彼女らはどう思い生涯を過ごしたのだろうか。後悔していた? それとも?