買った紙の本を読まずに積んでおくことを積ん読、とはうまいこと言ったものだと思う。ところで、Kindleで買った本を読まずに置きっ放しにしておく場合はなんと言えばいいのだろうか。
その時は読みたい気がして買ってしまったけれど、後から面倒になって読まなくなる本が多い。特に、古典〜近代文学とビジネス書。古典文学は「一度はちゃんと読まなきゃダメっしょ!」とテンションあげて買うけれど、名作ゆえにすでにあらすじ程度は一度は耳にしているため、どうも食指が動かない。いっぽうで、ビジネス書といえば、ラノベ以上の出オチ業界。(偏見) タイトルを読んで「まあ、そうだろうね」と思えば、中身にそれ以上のことが書いてあるビジネス書というのはまずもって少ない。
そんなKindle積ん読のなかにあった「サバイブ(SURVIVE)――強くなければ、生き残れない」もまた、ご多聞に漏れずビジネス書だ。ビジネス書にはビジネス書のフォーマットがあり、スマホのKindleの小さなサムネイルでもこの表紙はビジネス書だなとすぐにわかる。タイトルを見ても、おそらくは会社のなかでのうまい生き残り戦術的なもののTIPS集なのだろうなという感じだ。なんとなく漫画のコマっぽいものもあるから、イラストなどを多めにしているのか、あるいは今時流行りの漫画で読むビジネス書系かもしれない。はっきりいえば表紙を見るだけでうんざりしてしまい、しばらくほったらかしていた。なんでこの本わざわざ買ったんだろう? と思っていた。が、ある日ふと開いてみたら。
違った。
いや実際のところこれはビジネス書ではあるらしい。表紙には「新感覚のビジネス書」とあり、各章のタイトルは「負けない」「あきらめない」「争わない」「見かけによらない」「追いつけない」「手段を選ばない」「傷つかない」「動じない」「屈しない」「計り知れない」「狙われない」「おさえきれない」「働かない」「型にはまらない」「求めない」となっている。そして、それぞれの章タイトルにそった生存戦略が漫画と文章でわかりやすく解説されている。
野生動物の。
たしかに、表紙をよく読めば「自然界にならう、最強の生き方」と書いてある。たしかにね。そして中身はといえば、すがすがしいほど、野生動物の生態を面白おかしく紹介してあるだけ。いや面白いけども。すっごくためになったけども。自然すげえ!って思ったけども。ビジネスどこいった。これを読んで、自然界にならう最強の生き方がわかりました!ビジネスに活かせました!って人は、りんごが落ちるのを見て重力を発見できるとかそういうレベルの方だと思いますよ私は。
これとよく似たコンセプトの漫画に「天地創造デザイン部」という漫画がある。こちらははじめからエンタメ推しで、まわりに振り回される新人社員やらセクシーなお姉さまやらゴスロリちゃんやらオネエやら図体は大きいけれど気の弱い無精髭の大男やらいつも笑顔のドSキャラやら、そこはかとないBLテイストを感じさせるキャッチーなキャラクターたちがわいわいきゃいきゃい言いながら、神様のオーダーにしたがって新しい動物をデザインする、というのをコンセプトに、やはり野生動物の面白い見た目や生態を面白おかしく紹介している。なんとなはしに雰囲気は「聖☆おにいさん」あたりに近いかもしれない。神々の遊びを覗き見るのはいつも楽しい。なお、私が好きなのは6話で、どこぞのカードゲームアニメばりに、予備知識が与えられていない新技が次から次へと繰り出され、しかもそれが実際に存在しているっていうのがさらに面白かった。
ちなみにこの2冊、発売日が3日しか違わない。よほど好きでなければ同じジャンルの本を何冊も買ったりはしないので、もしもサバイブのほうがエンタメ推しで売っていたらこっちは買わなかったかもしれない。天地創造デザイン部のほうがキャッチーさでは上だからね。サバイブは読めば面白いんだけど、絵の派手さとかキャラ推しはないのでそこは弱い。
そういう意味で、サバイブがビジネス書というジャンルで売り出したのは、少なくとも私の購買行動的にはかなり正しい。字だらけのビジネス書を予想していたら、漫画がいっぱいで読みやすいっていうのも好感度をあげるし、それになにより、エンタメの漫画と考えるとこのページ数で1,200円は高いけれど、ビジネス書としては安くさえ感じる。
サバイブからビジネス的に学べることは、本の内容に書かれている生存戦略よりもむしろこの本自身の生存戦略のほうだったりしてね。