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漫画

魔夜の娘はお腐り申し上げて+魔夜の娘はお腐り咲いて1〜2巻

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「翔んで埼玉」で一気にメジャーシーンに躍り出た、というか、返り咲いた魔夜峰央の、長女マリエさんによる家族とBLに関するエッセイ本。

シリーズは分かれていますが、この三冊を合わせて三部作という感じ。

 

振り返れば、なんと壮大なミステリー

魔夜峰央といえばいまや、「パタリロ」と並ぶかそれ以上に、「翔んで埼玉」が有名ですよね。

私のうっすらした記憶では、ネットで評判になって、でも絶版で入手困難だと思っていたら再販だかなんだかで発売されて、あれよあれよという間に映画化が決まって…という流れだった気がしています。途中の魔夜家の受難を読んでいる途中、ずっと「翔んで埼玉をネットで有名にしてくれた人、この家の恩人だよな…」と思っていたのですが、この漫画の作者さんが、その、世間に知らしめたご本人でした。

しかも、無邪気に呟いたら受けちゃった☆ とかでなく、当時の世間の流行などを考慮に入れた、めちゃくちゃ恣意的なマーケティングでした!!

途中途中、魔夜峰央本人が守護霊様の声だかなんだかを頼りに呑気にしている描写にやきもきさせられますが、しかしまあ実際翔んで埼玉が跳ねたわけだし、ああいうぶっとんだ漫画を描くような人にはそういう不思議な力があるのかな…? と思っていたら、不思議な力じゃなくて娘の力。タネも仕掛けもあるおいつめられた人間の力ですよ!!

いやまあ、魔夜峰央について詳しい人には周知の事実というやつだったのかもしれませんが、わたしいちおうこれでも一番初めにネットで話題になった直後に情報キャッチしていたくらいには知ってたんですよ? 映画化が決まって「なにこれ? 魔夜峰央って今こんなの描いてるの?」みたいな反応する周囲に「もともとはかなり昔の作品だったんだけど、ネットでバズって…」とそっと単行本を差し出す側ではあったんですよ? でも知りませんでしたもん!!!

しかも、三部作の一冊目! あれを読んだときには「単行本1冊目がいきなりエッセイかー。やっぱり親の七光ってすげえなあ」「BLネタは面白そうだし絵も好みの感じなのに、あんまり漫画のお仕事もらうのにガツガツしている感じじゃないな。人気漫画家の娘さんだから、あくせく働かなくてもいいんだなあ」なんて感想抱いてました。本当にすみませんでした。三部作最終巻(「お腐り咲いて」2巻)で、あそこまで追いつめられていたということをはじめて知りました。このままでは彼女はアルコール中毒になって倒れるか、それとも家族が崩壊して…他多分そうなる前に翔んで埼玉がバズるはずなんだ。いつ来るんだ 、早く来てくれ! そう祈るようにページをめくっていったら、突然現れた救世主。その名もBL。BLというものの存在により彼女の魂は救済されたのです。その復活劇からのあのテンションだったのですね。

そして、もっとも魔夜峰央に近い存在だった(漫画を描く、お酒好き、など)彼女の復活により、魔夜峰央もまた復活。かつてBL漫画家として名を馳せ、猫を愛し、家族を愛し、すべてを漫画に描いていた男が描けなくなり限界まで追い詰められたそのとき、猫とBLと娘により復活。なんなんだよ。辻褄が合いすぎだろ。何十年越しなんだよ、いったいいつからこの伏線仕込んでたんだよ…!

 

往年の人気漫画家の家族ものといえば

ところで、うろ覚えで語りますが、「お腐り申し上げて」が発売された頃は、2世漫画家が目立っていた時期だったように思います。BEASTERSの人もたしかこの時期に世に出てきていたような。なかでも、往年の人気漫画家の家族が描いた家族についての話として「ど根性ガエルの娘」がありましたが

こちらのほうが先行して連載がはじまり先行して完結していますが、話の構造が似ているんですよね。

有名人気漫画家のお父さんと、お父さんと仲良しの美人で優しいお母さん。一姫二太郎の子供たちは、時にとっぴな言動をする両親に振り回されながらもこの家族が大好きで、いつも一家には笑いが絶えない…と思いきや、金銭感覚が乏しくトラブルメーカーのお父さんのせいで一家はすでに崩壊寸前。主役である長女も日々の生活に追われるうち次第に精神を病み…っていう。

ど根性ガエルの娘を読んだせいで(これも最後には救いがありますが!)、魔夜家でもさぞや鬱展開が続くのだろう、メンタルってなかなか完治しないけど今は大丈夫なのかな…と身構えて読んでいたら、BLが出たとたん鬱展開完全終了しました。いやまあ、翔んで埼玉が跳ねて家計の状況が改善されたので、っていうのももちろんあるのですが、それもBLのおかげなので。「ど根性ガエルの娘」のほうの鬱展開が長かったのは、多分BLがない世界線だったからなんでしょう。BLは世界を救う

 

次はBLものお願いします

そんなわけで「お腐り咲いて」の1巻終わりからは信じられないような、圧倒的に幸福に幕を閉じた2巻でした。この話の流れでこれ以上描くことってない気がするのですが、続きは出るのかな? 出たら出たで読みますけど、それはそれとしてBLものもそろそろまた描いてもらえないですかね。

以前ちょっとだけ描かれていましたけど、短期で終わってしまいましたが

「お腐り申し上げて」のBL語りを読む限り、作者のマリエさんの嗜好も絵もかなり好きな類のアレなんで、そろそろ新しいやつもお願いします! 上記のはいまいちソフトっていうか初BL作品だったせいか遠慮がちっていうか正直ヌルかったので、次はお友達と語り合われているようなもうちょいハードなやつ、よろしくお願いしまぁぁぁぁあす!!!

 

「翔んで埼玉」、原作しか読んでない or 映画しか観ていない人は、両方みたほうがいいですよ! それぞれの味わいでそれぞれに良し。

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